キャスティングは、釣り初心者はもちろん、経験豊富なアングラーにとっても重要な要素の一つです。しかし、キャスティングには数多くのトラブルや危険が潜んでいます。キャスティングの基本動作や状況に応じた判断が不十分な場合、思わぬトラブルや重大な事故に見舞われることが少なくありません。
本記事では、トラブルや事故を避けるためのコツを中心に、釣り具の選び方や、キャスティングの成功に欠かせない基本と知識を深掘りしていきます。悪天候時の対策、日中と夜間の違いなど、場面ごとの工夫もご紹介します。【 前半 】
キャスティングでのトラブル・事故
キャスティングの基本理解と知識が不足していると、キャスティングにおけるトラブルや事故のおきる確率を上げてしまう原因になります。
環境の理解と状況に応じたキャスティング
釣り場の環境や状況を理解し、それに応じたキャスティング戦略を立てることは、キャスティングの成功に直結します。潮の流れや風向き、ボートの場合はどこでキャストをするかなど。また、オーバーヘッドキャストか、サイドキャストか、またはアンダーキャストか・・・。ルールを守り状況を把握し、それに基づいてキャスティング方法を決めることで、トラブルなく釣果につなげることができます。
危険・事故の例
オンショアとオフショアに共に発生の可能性があることで、キャストの際、周りの確認を怠ってキャストしてしまい、近くにいたアングラーにルアーが当たってしまう場合、
・フックが服を貫通
・フックが身体のどこかに掛かってしまい、出血する大けが
・フックはかからなかったが、ルアー本体が身体に当たって大けが
・立て掛けてあるロッドにルアーが接触して破損
・ボートの装備、スパンカー、無線アンテナなどに引っ掛けて破損
など、多くの危険や事故が潜んでいます。キャスト時、飛んでいくルアーやジグは凶器といっても過言ではありません。当たり所によっては命に係わります。狭い空間のボート、乗り合いの遊漁船では特に注意が必要です。トラブルや事故を避けるために、遊漁船やボートの船長の指示やルールにしたがいましょう。また、トラブルや事故を起こした場合、訴訟に発展してしまう可能性が十分に考えられます。
事故を起こさないようナブラが起きても焦らず、一呼吸おいてまわりを良く確認し、他のアングラーがいる場合は声をかけましょう。もし相手がキャストしそうならば、少し避けて待っていましょう。
キャスティングのコツ
正しいフォームやキャスティングタイミング、力加減、周りの状況などの把握の有無などが、キャストの精度や飛距離に大きく影響します。特に初心者や自己流の方の場合、基本がわからなかったり、軽視しているところがあるため、トラブル発生が多くなりやすいでしょう。基本をしっかり学び、実践することでトラブルを大幅に減少させることができます。また、ロッドやルアーの軌道を上級者に見てもらうと自分の軌道を知ることができ、それをもとに練習をするとキャスト精度の向上が見込めるでしょう。
キャスティングの基本動作とは
キャスティングには、オーバーヘッドキャスト、アンダーキャスト、フリップキャスト、スキッピングなど色々な種類がありますが、ここではオーバーヘッドキャストを基本として進めます。
オーバーヘッドキャストの基本動作にはいくつかの重要なポイントがあります。
スピニングリール・シングルグリップの場合
シングルグリップの利点は、軽量なルアーを、オーバーヘッドキャストやテクニカルなフィリップキャストなどのキャストに適していることです。もちろんロングキャストも行えます。
右利きの場合、シングルハンドキャストをする時、グリップ(リールシール)を右手中指と薬指の間にリールフットを挟むようにグリップを握ります。この状態をツーフィンガーと言います。中指と薬指、小指によって握る力のバランスが良くなり、ロッド操作がしやすく、キャスト精度の向上が見込めます。そして人差し指の腹の中心より少し指先にラインをかけ、ロッドを自分の正面に持ち、後ろ横に人がいないことを確認して(人がいる場合は、待つか声をかける事)、肘と手首を使いスムーズなモーションで真っ直ぐ12時まで振り上げ、モーションを止めて素早くキャストします。
力ずくで投げようとせず、ロッドティップにルアーの重さを乗せることでロッドが湾曲し、真っ直ぐに戻ろうとする反発力でルアーを飛ばします。ここまでの動作で、ロッドとリールは正面に位置し、左右にぶれないようにします。
コツは、腕全体で投げようとするとロッドの反発力を生かせず飛距離が低下するので、肘から先と手首のスナップを利かせ反発力を利かせるようにキャストし、1時~2時の角度で人差し指に掛けているラインを離します。ルアーを正確に狙った場所に打ち込めるように反復しましょう。また、リリースのタイミングも非常に重要で、これは距離と精度に直結します。これらの基本動作を確実に習得することで、キャスト精度が格段に上がります。
ルアーが飛んで着水までの間は、人差し指をスプールエッジあたりに伸ばし、放出しているラインのコントロールをします。コツは人差し指の先にラインが触れるか触れないかくらいで、状況に合わせたコントロールをすると放出を押さえることができ、余分な糸ふけを出さずに済みます。着水と同時、もしくは着水直前に人差し指をスプールに当て放出を止め、ハンドルを回してベールを戻し(自動で戻る機構がある物)ラインを巻き初めます。
左利きの場合、右手をスプールに添えるようにするとコントロールしやすいですが。精度の高いキャストは右利きに比べ劣ってしまいます。
スピニングリール・ダブルグリップの場合
ダブルハンドグリップの利点は、重量のあるルアーをロングキャストするのに適しています。アンダーキャスト等でも力強いキャストが行えます。
リールシートグリップはシングルハンドと同じように握ります。もう片方の手はグリップエンドを握るようにします。キャストをする時、リールシートを握る腕を軸にするイメージで、グリップエンドを握る手を手前に引き寄せ、リールシートを握る手を少しだけ押し出すイメージでロッドを振ります。
ベイトリールキャスティングの場合
右利きの方には、ハンドの右巻きをオススメします。理由はベイトリールとロッドの機構に関係しております。スピニングリールと違って、ベイトリールのハンドルには、右利き用と左利き用とがあります。また、ロッベイトロッドのリールシートには人差し指をかける部分、トリガーがあります。
スピニングタックルは、リールシートを握るようになっており、大まかな行程として①キャスト②サミング③リーリングとなります。ベイトリールは、リールシートとリール本体を握る(パーミング)ようになっており、大まかな行程として、①キャスト②サミング③パーミングのため持ちかえる④リーリングとなります。
①キャストは、リールシートを握る際、人差し指と中指の間にトリガーをかけます。ワンフィンガーと言います。必ずワンフィンガーで握るようにします。ツーフィンガー(中指と薬指の間)でグリップを握るよりバランスよく、しっかりとグリップを握ることができ、手首の可動域も得られます。そのため、キャスト精度の向上、繊細なサミングが可能になります。オーバーヘッドキャストする際、リールのハンドルを上に構えることで、手首の可動範囲が広がり力の入力がしやすくなリます。
②サミングは、ツーフィンガーで握ってしまうと指1本分程親指がリールに寄ってしまうため、繊細なサミングが上手くできません。ワンフィンガーで握ることにより、スプールに親指の腹から指先が当たるようになるので、繊細なサミングが可能になります。
③パーミングは、ベイトタックルのリールを覆うように握ります。この時、中指と薬指の間にトリガーを挟みます。こうすることによりリーリングの際ロッドがぶれにくくなります。メリハリのあるルアーアクションも、繊細なアクションも可能になり、力強いフッキングも行えます。大物とのファイトの負担が軽減されます。
④スピニングリール同様リーリングを行いますが、ベイトリールはスピニングリールと構造が異なり、スプール自体が回転しラインを巻き取ります。慣性が低くハンドルも短いため、ドッグウォーク等細かなアクションが可能です。
悪天候時のキャスティングの工夫
悪天候時には、通常のキャスティング技術では思うように釣果に繋がらないことがあります。風が強い場合、意図的にラインをリリースするタイミングを遅らせて低く鋭くキャストすることで、風の影響を受けにくくすることが可能です。また、雨の日には滑りやすいため、グリップをしっかりと握ることや水に強いラインを選ぶことも重要です。状況に応じた対応策を考えることが、悪天候時の成功の鍵となります。
夜間のキャスティング
夜間はラインルアーの視認性が悪いので、キャストしたラインの放出が分るようにします。人差し指をラインにそわすようにすると、サミングやブレーキのコントロールが自然と掴めるようになってきます。ベイトリールの場合は、スプールの回転する音の変化を聞き分け、回転速度の変化を指先で感じ取りコントロールします。スピニングリール同様、馴れてくると暗闇でも問題なく使用できるようになります。
夜間、特に注意する点として、暗闇でのキャスティングは後ろに人が近づいていても非常に気がつき難いため、気づかないうちにキャスト範囲に人が入り込んで事故が起こり易い状況ができてしまいます。もちろん逆も言えることで、相手も自身を認識されていない可能性も考えられます。少しでも危険や事故を減らすために、相手に自身の存在が分かるようにバックマーカーを装備しましょう。バックマーカーを装備することで、自分のキャスト、ポイント範囲に相手が気づかず割り込まないようにするのも重要です。
後半に続く